日本のどこかで・・・
年老いた男がいた85歳である。「俺の人生、金で苦労した事は無かった」強がりなのか
嘘なのか、それともかすかに残る彼の命のともしび、すがり付くものなのか哀れである。
確かに、昔この人は小学3年の私を自前のモーターボートに乗せてくれ瀬戸内海を豪遊させてくれた。
今は広島の原爆センターと言う老人ホームにいるという。
昔私を可愛がってくれた話を嬉しそうにして、時間を過ごし、父との再会に誤りの言葉はなかったが
悔恨の気持ちからか、ただむせぶ様に泣いていた。
これから93歳の父が郷里の広島に帰るとは思えないが
「わしも、広島に行くけーのー、たっしゃでおれよ」「オー兄貴、待っとるケー」
この思いもしない再会は85歳のおじの長男の嫁の暖かい愛から生まれたものだ。
子供同士の中には、和解が成立した。
これで、このおじも三途の川の両親との再会に顔を合わせることが出来るようになったわけだ。
全て、後ろは見ない。素晴らしい前だけ見よう。
せめて親戚だけでも身内だけでも、いつもニコニコと日本のどこかで暮らしていてほしい。