芸術の高さ

今日友人の「たかはし じゅんいち」氏の写真の個展が新宿高島屋10階のギャラリーで開催されているので

主人と伺った。

人間の身体を極限まで表現できる数少ない写真家だと思う。今回は印画紙ではなく、和紙を使っている。

「内観の刻」全てに写真家と被写体の研ぎ澄まされた言葉ではない会話が私に迫ってくる。ちょうど応接セットの前の白い壁にたった一枚の

実物等身大の写真がある。初め写真だと言う感覚から離れてみた。するとその写真から『壁の中に塗り込められた人が、今まさに見えない視界をさぐりながら

こちらに出てこようとしている』と言う感覚になってくるから不思議だ。じゅんさん曰く「これは、和紙の力なのです。」という。

どう言う訳だか解らないが、紙を和紙にした途端こんな感覚が生まれたのだそうだ。

しかし、写真家としての見方と芸術現代アートとしての作品という捉え方とでは、違いがあるらしい。

また、商業ペースと芸術ペースとの難しさもあるらしい。

「これをニューヨークに持って行きたい。」私は厳しいニューヨークの目に触れさせたい気持ちが解る。

感性の世界で言わしてもらえば、写真とは素直なものである。そぎ取ってそぎ取ってそこに個性が表現されている。モデルに頼らず、芸術としての肉体

を追及していく。写真家が自分すらそこに置かない「無空の刻」をシャッターという道具で切り取った時何かが起こる。彼にはその才能がある。

しかし じゅんさんはやさしい「もっと、もっと求めないと。これでは満足していません。」そう言い残して又写真展に帰って行った。

彼は日本を代表する日本人100人の中の一人である。是非時間のある方は会場まで足を運んでほしい。壁から出てきそうな男と対面して欲しい。